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文章読本  著:谷崎潤一郎

文章読本  谷崎潤一郎  中公文庫

小説家が文章とその使い方をどのように捉えているか、
ということに触れられておもしろい。
また、作者があげる文章の例とその効果の解説が
とても納得できてなにやら楽しくなった。
古文はちょっと苦しかったが。

しかし小説に限った話ではなく、日本語の文章一般を視野にいれている話。
印象的なのは、日本語は語彙が少ない、語り過ぎない、
実用的な文章であること、あたりだろうか。

本の感想を述べる時、おもしろい楽しいすごいくらいしか
おもしろさを表現するのに使ってないなと、表現し切れていない
悔しさと情けなさがこの本を読む動機のひとつにあったのだが、
むしろ語彙の少なさが肯定される。

そのひとつが読者に想像してもらうことで補うという効果。
むしろ、語彙が少なく、一語に含まれる範囲が広いことで、
その語を使うことであらわす状況・場面・感情に含みがうまれ
読者それぞれが各自に最適な想像をすることができるということ。
とても印象的なのは、李白の詩「静夜思」を例にだしての説明で、
確かに語り過ぎない、仔細を書かないことでの効果がすごく感じられた。
これは語彙についてを主に述べている例ではないが。

また昨今(この本の前書きは昭和9年9月に書かれたらしい)は
修飾の多様による悪文が増えていると述べる。
文章において意味の重複する言葉をいたずらに重ねて、
しかし実際に効果は上がりえていない、悪文になっていると述べる。
印象という意味でも実用文が効果をなさないわけではないと。

ただし、ここで気をつけなければならないのは二つ。
一つは自身で想像している実用文と作者の想定している、実際に例として
挙げている実用文との違いを認識すること。
味もそっけもない文章で書けと言っているのとは違う。
二つに、文章はその内容や発声でのリズムと別に字面としても印象を
与えるものであり、またあえて効果として悪文にすることも選択肢だということ。

リズムについては、多くの人は文章を頭の中で声に出して読んでおり、
そのため文章のリズムとは声に出してのリズムも含まれる。
しかし、文章におけるリズムは発声におけるそれ以外も存在する。
漢字、送り仮名やルビによる字面もリズムをつくる。

あとは紙一重の表現のぼかし、間接さ、直接的でないこと。
詩に絡むとわかりよい。わかりよすぎて意図を外れるかもしれない。

といったところか。身につけることは、常に頭においてそしてそれを手元に
おいて文章を書いてみること、または小説などを文章の視点から
眺めてみることなしにはできない。でもそういう行動はしなさそう。

まあ、たまに読み返そう。
なんか文章の調子がけっこう好みで読みやすいし。

以下に抜粋など

P.28

最も実用的に書くと云うことが、即ち芸術的の手腕を要するところなので、

P.33
言葉や文字で表現出来ることと出来ないこととの限界を知り、
その限界内に止まること

P.40 字面、文字について
それが読者の眼に訴える感覚を利用することは、たとい活字の
世の中になりましても、或る程度まで有効

P.43 文章を音読した時に
もしすらすらと云えないようなら、読者の頭に這入りにくい悪文である

P.95
即ち感覚と云うものは、一定の練磨を経た後には、
各人が同一の対象に対して同様に感じるように作られている

P.194
われわれは運命に反抗しようとせず、それに順応するところに楽しみを求めた。

P.223
或る感情を直接にそれと云わないで表現することが、
昔の詩人や文人の嗜みになっていた

解説から
P.231
谷崎潤一郎には『陰翳礼讃』という著書があって、日本の美は
陰翳にあることを述べている。エロティシズムについても、
仄暗く隠すところに値打ちがあるというような意見である。

まったくもってその通りだ。隠されるからはっきりと見えないからエロいのだ。
そしてそれは衣服など外見だけの話ではないのだ。
…ああでも『陰翳礼讃』読んだはずなのだが、まったく覚えてないなぁ。

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