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ネットvs.リアルの衝突  著:佐々木俊尚

ネットvs.リアルの衝突  誰がウェブ2.0を制するか
著:佐々木俊尚   文春新書

タイトル通りとも言えるのだが、広義にとらえているともいえる。
ネットが普及し一般に利用が拡大するにあたってどのような問題が
発生するか発生したか。ネットに限らず技術等が政治や企業による
商業活動というリアルと相対した時何が起こったか、
現在進行形で何が起こっているか、というところかな。

前半はwinny裁判に注目し、それをインターネットの歴史、
P2Pソフトの歴史を絡めて概説する。
この著者はwinnyを単純に著作権違反ソフトとして片付けていない上に
ネットの進化の流れやそもそもの理想からの位置づけをしているので、
winnyというソフトを真面目に理解するのにもとても有意義。

ただ、一番印象に残ったのはP.136の著作権侵害で逮捕された
winny利用者の言葉だ。二人いてそれぞれの言葉からの抜粋だが、

「~。winnyは違法なやりとりをするために作られたソフトだと思った」
「~。こういうシステム自体をなくした方がいいと思う」

ファイル共有やP2Pということの技術的な側面、ネットワークの理想としての
存在などそこではまったく省みられていない。
ソフトなど、広く使われるものがそれの持つ技術云々について
まったく触れられず使われるというのは、一つの成功の形だと思う。
しかし、ネットの成長と理想を概説されたあとにこの言葉をみると
なんともやりきれない。

後半は主たる話題がネットからコンピュータテクノロジに移る。
ただ共通しているものもあり、それがP.11に他から引用している

政府や大企業が巨大なパワーによって新技術を内部へと取り込み、
みずからの覇権を復活させる可能性があるというのだ。

覇権というキーワードである。または囲い込みである。

この後半も歴史として流れの中で説明されるために
現状がとても理解しやすい。政治というリアルがどう干渉するか、
企業の行動によって何が変わるかを例示していく。
中国の中華主義だとかね。


この本は狭く使われていた、または認識されていたものが
一般に広まるとどうなるか?
機能を使うために、それが存在していることが普通であると
一般に認識されるようになるとどういうことが起こるのか?
という視点からみてもおもしろい。

ネットとリアルが対立していくかのようにタイトルで煽っていながら
内実は煽動書ではなく、現実と歴史を観察・分析した書に思う。
なかなかおもしろかった。

でもサブタイトルはあまり関係がないんじゃないかなと思います。
(web2.0なんてバズワードだよ、区切りの言葉として有用性を持つのは
認めるが声高に述べる人を見るとどうも侮蔑してしまうよ、
と思ってるのもこの判断に影響してますがー。)

以下引用

P.97 言論の自由は自身が嫌悪する意見の自由も認めることである

「言論の自由を守るということは、他の人々の言論の権利も
守らなければならないということだ。もしあなたがその意見に
反対だったり、嫌悪感を持っているとしても」

P.169 戦略

ストラテジーは、企業の長期の経営方針を形作るものだ。経営を取り巻く
状況やテクノロジーに大きな変化が起きたら、必ずいったんは
戦略に立ち返り、その時点で戦略に修正が必要かどうかを分析し直す。

P.223 閉鎖コミュニティで生産されていたものが外部に目をつけられ規模の拡大が生じたとき

企業活動というリアル社会とインターネットの文化の衝突に直面し、
これまで穏やかで閉鎖的なコミュニティの中で安住してきた技術者たちは、
どう対応していいかわからないまま右往左往していたのである。

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