みすてぃっく・あい
みすてぃっく・あい 著:一柳凪 絵:狐印 ガガガ
これは気に入った。百合ってのも一応ありはするけれど、むしろ物語の構成が。タイトルがいまいち合わないように思えてならない。全部ひらがなになるような、そんな印象の内容じゃあないよ、これ。百合できゃっきゃうふふでにやにやするようなのはメインではないねー。むしろSF的量子解釈の適用と痛さじゃあなかろうか。そういう話になってしまっていることへの落胆がまったくないといえば嘘になるが、こういう類の話はけっこう好きなのでむしろいいもの見つけたと喜びがある。痛さと選択と受容とをあらわすギミックとしての量子解釈の使い方がとてもおもしろい。伏線、構成がきっちりあって全体としてしっかりそういう話に向かっている。いやいや、なかなかうまい。(ちなみにここでの痛さは悪い意味というか、指差してあの人痛いというようなそういう痛いじゃなくて、心がえぐられるようなそういう意味の痛いというか。)
虚数の庭というのがまさにその通りでおもしろい。庭に対する解釈と虚数に関してと、この物語のなかで語られる言葉がそのままこの本の内容も表している。まあ、これがそのままタイトルだと硬すぎるのとネタバレ気味なのとがあるのだけれど。
あらすじが嘘を述べてはいないが正確ではない。選ぶことが主題になっているのは確かだが、選ぶのが三角関係の行方とはいいがたい。愛の行方と i の行方をかけるやりかたはおもしろいし、愛の行方を選ぶことも正しいのだけれど。百合で三角関係でわーいってなものを期待しても満足はできないと思われる。そこまで読み進めたときには、百合ではあるけれどメインはなにか違うんじゃないかと違和感持ってる人のほうが多いだろうけれど。百合なのも確かで物語中で否定されないけれど、印象に残ったのは痛さと虚数の庭という言葉だなぁ。
まあ、ともあれ、おもしろかった。
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