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銀色ふわり

 銀色ふわり
 著:有沢まみず 絵:笛  電撃文庫

 最後に電撃文庫を買ったのはいつだったか。いつからかなんとなく意地で電撃を無視してたが、挿絵が笛だということで買い。まあ、意地なんてそんなものだ。

 絵がすばらしかった。ハコイヌがいる!?とかで終わると語り足りないのでもうちょっと。

 ずいぶんゆっくりで丁寧な進行だなと思った。展開の起伏に派手さがない。正直に言えば、あーこいつはなんか唐突に大変な出来事(家出か消失か)ってのが発生して主人公がんばってはっぴーなステレオタイプかなーと予想しながら読んでいた。しかし、そんなイベントがない。あるのはともにゆったりとした状況の開示と打ち解けていく経過。けれどそれに退屈も不満も感じない。そのゆっくりとした描写がむしろ心地よく、引き込まれた。

 主人公の性格とその描写が押し付けがましく感じられなかったのも好感だった。けっこうずいぶんな家庭環境で、また「現状主人公一人だけ」なんて存在なのに、気負いが薄い。かといって無気力までいかず、行動しないことやニヒリズムへの苛立たしさを感じることもない。

 ゆっくりとしていて、なのに確かに変化がそこに存在している展開がよかった。また、終始ゆったりとしながら話を作ることができている作者がすごいなと。ついでには、こうまで続刊を前提とした話を出せるレーベルとしての地力を感じた。


 さらについでに、設定部分に関しても多少興味がわいた。
 生きてるものを直接に知覚することができず、そして相手にも認識されない、そんな存在をどうやって赤ん坊から育て上げたのかに強烈に興味がわいた。人間の子供は(哺乳類全部そうだったかな)しばらくの間それ単体では生存できない。そんな存在を、さらに周囲が認識できず、周囲も認識できない存在をどう育て上げたのか。どのように栄養を与えたのか?栄養摂取を学習させたのか?できないことじゃない。けれど、自分で想像した場面の図はひどく機械的になりすぎて(気分はマトリックス)、どうも気持ちが悪い。それをはっきりしたいなという思いと、そこまでして育てた動機が気になった。

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» 2008-07-29 [直chan WORLD]
銀色ふわり  ライトノベル「銀色ふわり」(有沢まみず)を、読みました。今月の新刊で、表紙の絵と、帯に書かれた「互いに孤独を秘めた少年と少女のせつなくて温かい物語。」という言葉に引かれて、久々の衝動買い。新作のライトノベルは、久しぶりですが、約5時間で、一気に読んでしまいました。  高校生の春道は、幼い頃、母親に捨てられ、父親は目の前で自殺という不幸な境遇で、親類の家で育てられた。一人暮らしを始めて、愛想笑いも板に付き、それなりに人付き合いも上手くなっていたが、度々、悪夢にうなされ、拭いきれない孤独... [続きを読む]

受信: 2008年7月29日 (火) 00:10

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