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その数学が戦略を決める

 その数学が戦略を決める
 著:イアン・エアーズ 訳:山形浩生  文藝春秋

P.132

「主要な特徴をグーグルに入れたら、すぐに出てきましたよ」

 「絶対計算」なんてバズワードを持ち出すあたりに、あちらの人のプレゼン能力の高さを感じますが、つまりは統計分析とデータの蓄積をもっと信頼しましょうって話。

 いわゆる専門家の判断よりも、十分な量のデータを統計学使って処理したもののほうが信頼性は高い、という事例集および啓蒙書か(もちろんデータを取れないような分野には使えないと断りを小さく入れる)。また、統計の威力に直面した人間(特に専門家)がどのような態度をとるかの事例集でもある。

 統計の強さに異存はない。なんて態度をとってしまうとけっこうつまらない本になってしまう。思ったよりもずっと強力だなと実感できるのはよいのだが。

 ただ、すべてが統計分析にとって変わられるような言い方は挑戦的だなと。仮説や要素選択だけでなく、データの蓄積こそが統計分析が受け入れられた社会での人の重要な役割だと思うがなー。統計を有用ならしめているデータの蓄積に関してもっと視点をおいて欲しいなーとか思いつつ読んでいた。統計はデータがあるから有用で、データをとる人だけでなくサンプルとなる人であっても(むしろこちらが)統計の社会には重要なんだって援護してもいいのに、あえて人を突き放すのかなと。(原書を忠実に訳しているとすれば、)ところどころにある人を馬鹿にした幼児に話すような語りから見るに、あえて挑戦的な、挑発的な本にしてるのかもしれない。それだけ統計の強さが今なお受け入れられてない、ということなのだろうか。

 自身の専門でない領域に関しては統計は容易に受け入れられるものだとある。著者の専門家の抵抗の解釈に頷きつつも、一般大衆にとっても、個性がなくなることへの抵抗で統計への抵抗がでないかなとも思った。たとえば自分自身の本の趣味嗜好に対して、あなたとまったく同じ好みの人はこれくらいの確率です(、つまりはこれくらいの大人数あなたの同類がいます。なのであなたの個性なんてものは幻想です。固有の感性なんてありません。大人数のなかの一人でしかありません)。そんなあなたにはこの本がおすすめです(あなたの同類は何%の確率でこの本を買ってます。統計分析の精度向上のため、1サンプルとして反応の協力とできれば売り上げの協力をお願いします)。なんて()の中身を素直に述べられたら、()の中身が裏にあるんだなって理解したら、大多数のなかの一人でしかない、サンプルの一つでしかないと了承する社会になったら、、まあ気にしなくなるだろうけれど。現在の中途半端な状況ならむしろ愉快に思って積極的にサンプルになりたがるかな?(amazon開いたら「この商品を見た後に買っているのは?」としてすでにパーセンテージが表示されてた。相手にサンプルと感じさせず、有用な結果だけを見せる。見習いたい。)

 集団としての人を再認識するのによかった、というところかな。人は人自身の行動データを蓄積する時代から活用する時代に入った、かな。

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