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視点をずらす思考術

 視点をずらす思考術
 著:森達也   講談社現代新書

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 いつかどこかで何の理由かは忘れたがこの本をチェックしていて、別の用でamazon行ったときについでに放り込んだ。買ってから改めてタイトル見て、序文をちょっと読んで、これは期待できるかなと読み始めたらすかされた。

 まず、思考術と銘打ってはいるけれど、この本は著者が書いた細かな文章の寄せ集めであって、方法論の類ではない。そして、これが致命的だけれど、何を基準として視点がずれているのかわからない。

 著者の、日本人を羊の群れと見立て、数匹のヤギにぞろぞろついていくという捉え方は実に的を射ていると思う。その考えに則るならば、羊の群れの大多数はこの本にあるような視点を持ち得ないがゆえにこの本に価値があるのだろう。この本に書いてある捉え方が異なった視点であり、読者はこの本に書かれていない視点であるために、この本を読んでそういう見方もあるのだとうなずくということだろう。しかし、これには前提がある。「大多数はこのような視点である」という「これ」が提示されることだ。または、読者の誰もが明白に「これ」を共有できることだ。様々な場所に書いた短い文章の集積だからか、それぞれにおいて「これ」という比較の元になるものが明確でない。

 だからなのかそれ以外の理由なのか、少なくとも自分には、著者の視点がそれほど他とずれているとは感じることができなかった。正確にいうならば、何個かおもしろい視点だと感じた。しかし、著者の考えと主張を知る分にはこの本に価値があったが、視点をずらす思考術という点でこの本を見ると価値がほとんどなかった。

 著者が、自分自身が常に他と異なるのだ、視点が異なるのだという絶対の自信の元にこの本を出したのならば、なるほど著者はKYなのだろう。また、この本がこの内容で十分に視点をずらす思考が読者に伝わると考えられて出版されたのならば、自分が考えているよりも世の中の思考は凝り固まっていて、自分自身が狭い視野しか持たないゆえに世の中の現状に気づいていないということなのだろう。

 自分の結論としては、タイトルの内容を求めてこの本を読んだのは失敗だった。しかし読んだ価値があった、とは残念ながら言いかねる。

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