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生活保護VSワーキングプア

 生活保護VSワーキングプア  若者に広がる貧困
 著:大山典宏  PHP新書

 ひさしぶりによい新書を読んだ気がする。
 
 タイトルにワーキングプアとありますが、二つの比較というより生活保護に関してが主。
 見えないもの、または意識して目をそらしている現実の紹介。実態と問題点、主張と将来に向けて今行われている活動とについてまで述べられていて、問題点を指摘するだけで終わらない。

  わかりやすさ優先では見えない、しかし現場であたりまえの現実が伝わります。生活保護の申請はなかなか通らないという印象、また生活保護受給者に対する蔑視がまず存在する。そしてまた、実際にいわゆる社会的弱者と考えられる明らかに働けない病人や老人に関しての生活保護すら通らないとマスコミで取り上げられ叩かれる。しかし、マスコミはわかりにくい、より大きな問題は取り上げない。実態の一つしか取り上げず、現場を叩いて終わり。

 働かなくて金がもらえるのなら、働けるけれど働きたくない人間もよりつくに決まっている。そういう人間をどう見極めるか?申請した人間全員に通したら結果として国がつぶれる。だから見極めが必要になる。必要な人に届けることができないのは問題である。けれど、判断が難しい。そして、人を判断する仕事は嫌われる。金が絡むと口汚い非難が発生しやすい。ただでさえ嫌われ仕事であるのに、マスコミから、マスコミフィルターのみから判断した一般の国民からの非難も発生し、熱意ある現場の人間ほど壊れる。組織の運用効率が下がっていく。

 正しいとわかっていることができない。申請者が善良な人間ばかりではない。生活保護を担当するケースワーカーは当人がどう努力をしても何も評価されずに非難ばかりあびる(一部医者に似てるなぁ)。そんな制度と社会の問題としてさらに、必要な人に支援が届いていない例を挙げていく。こどもと、好景気ということもあったのか、若者。生活保護という存在自体を知らない、または負の印象から生活保護をうけてはだめだとがんばって体と心を壊してしまう。

 行き詰まりなどうしようもなさそうな問題が積み重なっているなかで、できることもまた積み重ねていこうという提言と実際の行動によって、救いと著者の主張と制度の実態が見えてきます。生活保護の制度が機能していないわけではない。必要な人に届いていないわけでなく、しかし必要な人全員に届いているわけではない。だから、理想と理念のために行動しているという現実が伝わります。100年先の日本のために行動している人というのは、こういう人のことを言うのでしょうね。

 読んですぐに何ができるってわけでもない。けれど、社会に存在していてけれど見えていなかったことを詳しく知ることができた。この問題と当事者に関する判断は読む前と変わるだろう。ごく当たり前な、単純ではないから難しいという問題が生活保護にも存在している。当たり前なことをなぜやらないのだというときには、大概において当事者は既に努力した後である。できない理由と問題に考えをめぐらせた後に判断を行えるようにしたいものだ。

 ひさしぶりに感想書いたら、これは感想というより内容紹介かもしれない。。。


 蛇足ですが、マスコミが物事の極端な面だけ取り上げること自体はしょうがない部分もあると考えている。物事の実態を10割伝えようとしても、1割も伝わらないことはままある。特に、テレビというメディアにおいては、視聴者の多くは取り立てて関心のない人間であり、関心を持たせなければならない(それでも圧倒的に多くの人間にメッセージを届けることができる)。濃いものを作ったとして視聴者が番組の存在を知って放映時間にテレビの前にいなければならない。
 何も知らない人間にまず物事をしってもらうには、全体ではなく、わかりやすいせいぜいが3割ほどをとりあげることだ。そうすればその半分、全体の1割ちょっとくらいは伝わる。全部知ってもらおうと意気込むよりも、一部だけ知ってもらおうとしたほうが結果的に多く伝わる。
 だから、しょうがない部分はある。しかし、このジレンマを把握せず、センセーショナルなことだけ書き立てるカスはだめだ。だから、報道は物事のわかりやすい部分だけしかないのだと常に意識して眺める必要がある。だから、視聴者が自分の時間にあわせて閲覧できるメディア形態になれば、濃いものも需要があり、良いサイクルがまわると思うのだが。蛇足に過ぎるのでここまで。

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