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追想五断章

 追想五断章
 著:米澤穂信  集英社

 正月休みに読んだ、今年最初に読んだ小説だった。おもしろかった。がしかし、物足りなさも感じる。

 この作者に期待していたものがつまりは青春ものだったからではある。そして帯の青春以後を描いたという言葉から、この作者ならば何を描くだろうという期待には、自分が勝手に抱いた期待からは多少弱かった。

 思うに、自分にとってこの作者の本の何が楽しかったのかを振り返ると、生きるのに重要でない些事に全力を尽くすさまが最大の魅力だったと思う。生きるのに必要ではない、しかし日常に起こりえる出来事(特に青春と呼ばれる時期において)の、些細でありながらその当人にとって重大であるという、生きるためという理由からは離れた出来事への登場人物の取り組みが実に輝いているさまに楽しさを感じたのだと思う。古典部や季節限定シリーズが印象に残っているのはなぜと振り返るとそう思った。

 たぶんこの本を買ったのは最後の一文でひっくり返すとかそのあたりにこだわったとか、そんな煽りをどこかで見たことが関わっていると思う(追記:この煽りは「儚い羊たちの祝宴」についていたものだ。勘違いでした。申し訳ない。追記終わり。)。その言葉に抱いた期待にはどうにもモノ足りない。今手元になく、正月に一度読みきったのみだから、もしや誤解の可能性もある。しかし、主人公の行動に対しての転換がない。各挿話によって構成され、転換されて浮かび上がる物語はおもしろい。けれど楽しくはない。主人公が切実な理由を持ち、物語のなかへの投入感が少ないからだろうか。ボトルネックほどではないのに、こちらがより楽しくなく、残らない。


 なんだろう、この、おもしろかったけれどもの足りない感覚。正月に読んだのにいまさら感想書いていることにも表れている。読み終わってすぐに感想書きたいという種類のものがある。その次に、感想書きたいけれどおもしろかったとしか書けないもの、違う言葉が思い浮かぶものという種類がある。すぐには書けなかったな。言葉は浮かぶのだけれど。

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